
エサレンについて
エサレン®マッサージ(ボディワーク)についてお話する前に、まずは「エサレン研究所」について、少しご説明させていただきたいと思います。エサレン研究所というと、エサレン®マッサージの養成機関、マッサージの研究所というふうに思われている方もいらっしゃるかもしれません。でも、その答えは正確ではありません。
エサレン研究所というのは、そもそもマッサージ「だけ」を取り扱った研究機関ではないのです。
時代は1960年にさかのぼります。スタンフォード大学で二人の大学生が出会いました。マイケル・マーフィーとリチャード(ディック)プライスです。この二人が「実体験を通して、経験を通して学びたい」とビッグサーの断崖にセンターを作りました。これがエサレン研究所の始まりです。
その土地はもともとネイティブアメリカンであるエサレン族の住む土地でした。マフィーの家系は裕福でかつてエサレン族の先住地であったその土地を所収していたのです。自然豊かなその土地には、アメリカではめずらしく温泉が湧き、岸壁に打ち付ける波の音が、常に心地よく響いています。
創始者であるマイケルとディックは自然とともに生きた彼らのスピリットを尊重し、「エサレン研究所」という名前をつけました。
エサレン研究所では多くの専門家たちが招かれ、そこでワークショップや招集会議、研究などが行われるようになりました。
分野も、心理学、哲学、人文科学、東洋思想、また、ヨガや瞑想、ダンスなど実にありとあらゆる方面のプロフェッショナルたちが集まりました。
ちなみに、ロルフィングのアイダ・ロルフ、トレガーアプローチのミルトン・トレガー、フェルデンクライスのモーシェ・フェルデンクライスといった著名なボディワークの創始者たちも、このエサレン研究所を訪れ、そこから彼ら独自のメソッドを世界へと広めていきました。
現在は年間に約500種類ものワークショップが行われる非営利の教育センターとなっています。
エサレン®マッサージ(ボディワーク)とは
さて、話を戻しますと、エサレン®マッサージ(ボディワーク)というのはこの研究所から生まれたボディワークのことを言います。
エサレン®マッサージ(ボディワーク)には創始者というものがありません。エサレン研究所を作ったのは、先程も申しましたマイケルとリチャードです。ですが、エサレン・マッサージとなると、誰か特定の考案者がいるわけではないのです。ですから、エサレン・マッサージは「波と自然と呼吸が作った」というふうに言われています。
でも、このことは、エサレン・マッサージがそれだけ無限の可能性を秘めたボディワークであるというふうにも言えます。創始者がいない分、特定の型がなく(まさにエサレン研究所がそうであるように)、そこには様々なプロフェッショナルな分野での叡智と研究が行われているのです。
エサレン研究所ができた当時、ヨーロッパでは主にスウェディッシュ・マッサージがマッサージの主流でした。
エサレン®マッサージはこのスウェディッシュ・マッサージをベースに、波の音、呼吸のリズムが重なって作り上げられていったといいます。
エサレン®マッサージ(ボディワーク)にはフレームワークとディテールワークというアイデアが生まれています。
フレームワークは基本の枠組みで、ディテールワークとは体の部分テクニックのこと。エサレン・マッサージはロングストロークを中心にこの2種類のワークの組み合わせで行われます。
ロングストロークは手から、肩、背中、腰、下股、足と一回のストロークで全身をなだらかに軽擦していきます。通常のアロマトリートメントではそのような全身にまたがる長いストロークは行いません。
これはエサレン・マッサージの「体はすべて繋がっている」という考えに基づいています。
ですから、基本ショーツも履きません(koko_ha.ではご要望であればショーツを着用した施術も行います)。大判のタオルだけを肌の上にかぶせ、ドレープワークと呼ばれるタオルワークで、全身を流れるようにトリートメントしていきます。そしてこのロングストロークこそがエサレンの大きな特長のひとつとなっています。
エサレン®マッサージ(ボディワーク)の特徴
エサレン®マッサージ(ボディワーク)の特徴はなんといっても、その自由度の高さであると思います。エサレン研究所で生まれたボディワークということで、あらゆるボディワークのエッセンスがエサレン・マッサージにつめ込まれているのです。
先にも述べたロルフィング、トレガーアプローチ、クラニオセイクラル、フィルデンクライス、などのボディワーク。ゲシュタルト療法などの心理学や禅の思想、そして呼吸のリズムに波の音。
これはひとつに、エサレンがひとりの創始者が生み出したものではなく、研究所という様々な分野の叡智が集まって作り上げられたことが、起因しています。
ですので、決まった手順や型がなく、アプローチ方法も多彩であるため、毎回のセッションがとても新鮮に生み出されていきます。
エサレン・シニアティーチャーであるディーン・マースン先生は、エサレンをジャズのインプロヴィゼーション(即興演奏)のようなもの、と述べています。
まさにセッションひとつ、ひとつが「今ここにある」ときにだけ体験できる一つの作品のようなものなのです。 プレゼンス(今ここにある)とアウェアネス(気付き)、コネクション(繋がり)はエサレン・マッサージの大切なキーワード。 今この瞬間に相手につながっているということ、そのことを心と体すべてで感じとることが、エサレン®マッサージなのです。
エサレン研究所
エサレン研究所はサンフランシスコから車で3時間ほどのところにあります。研究所から一番近い街からでも車で40分ほど。このことからも、研究所がいかに人里離れた場所にあるかがお分かりいただけるかと思います。
エサレン研究所のあるビッグサーはまさに自然の宝庫。様々な動植物が生存し訪れる人たちを魅了します。
ジャアイントケルプと呼ばれる世界一長い海藻が生息し、崖の上からはラッコやイルカ、クジラも見つけることもできます。
敷地も広く、120エーカーの広大な土地にはセミナー施設のほか、プール、学校、温泉、ロッジ、農園、などがあり、施設では日々様々なワークショップが年間500ものペースで行われています。
しかし、百聞は一見にしかず…!でした。
中村がエサレン研究所を訪れたのは2014年12月。クジラが潮をふく海、神々しい山々、元気に育つ色とりどりの野菜、花々に囲まれた瞑想スペース、風に乗って香るハーブ畑、常に聞こえてくる波の音、カエルの大合唱…挙げればきりがない、素晴らしいものに満ちていました。
自然が豊かなところは沢山あるけれど、今まで経験したところとは明らかに違う、大いなる何か、スピリットの存在を感じて圧倒されました。温暖な気候の中、たくさん散策もしてきました!
また、エサレン®マッサージ講習以外の時間は好きなワークショップに参加することができ、太極拳やヨガ、ダンス、音楽のクラスへ。自分の体、存在そのものと向き合う、とてもよい時間になりました。
「実体験を通して学ぶ」「人間の可能性を知る」 50年以上前のエサレン研究所設立当初の時代の潮流が今も続いていることを、肌で感じて来ました。